皮膚への影響

人間の皮膚の色はさまざまです。それは赤色と黒褐色のメラニン色素のせいで、メラニンが多いと肌の色は黒くなります。メラニンの量は白人は少なく、黒人は多く、日本人を含む黄色人種のメラニンの量は、白人と黒人の中間ぐらいです。

太陽に肌をさらしていると、日焼けして赤くなった皮膚がだんだん褐色に変わっていきますが、これは色素細胞が新しいメラニンを作ったためです。紫外線が当たると、数日後から色素細胞はメラニンをどんどん作りだして、まわりの角化細胞にも分配します。色素細胞からメラニンをもらった周りの角化細胞が、メラニンを基底細胞の核の上にちょうど帽子をかぶせたようにのせ、基底細胞の核にある大切な遺伝子が紫外線で傷を負わないように守ります。このようにメラニンは、太陽光のなかにある有害な紫外線を吸収したり散乱させてりして、皮膚への害をくいとめようとしているのです。日焼けをすると皮膚が褐色になるのは、皮膚を紫外線から守るという目的をもった色素細胞の働きです。赤道近くに住む人びとの皮膚の色が黒に近いのは、色素細胞がメラニンをたくさん作って太陽光線の害から皮膚を守っているのです。しかしながら、メラニンによる皮膚を守る力は実際に浴びる紫外線と比べてとても弱いものです。

遺伝情報をつかさどるDNAはUV-Bを吸収し、吸収したUV-BのエネルギーによりDNAが傷つけられます。私たちの体の中には傷ついたDNAを修復する機構が備わっていますが、DNAの傷害が度重なると、修復過程でエラーを起こし修復しきれない遺伝子情報(突然変異)を持った細胞が作られることになります。このような突然変異が長い期間を経て、皮膚での発がんを引き起こすと考えられています。

皮膚への影響は、紫外線照射直後に現れる急性影響と、長い時間を経て現れる慢性影響に分けて考えることが出来ます。

1) 急性影響
急性影響としては、サンバーン(Sunburn)サンタン(Suntan)があります。日本語ではどちらも“日焼け”と呼んで区別していませんが、異なるものです。サンバーンは紫外線に曝露した数時間後に現れ、8時間から24時間でピークとなり、2、3日で消失する赤い日焼け(紅斑)で、サンタンは赤い日焼けが消失した数日後に現れ、数週間から数ヶ月続く黒い日焼けです。サンタンは色素 細胞がメラニンをふやし、皮膚に色素沈着が起きたものです。 サンバーン、サンタンの現れ方によって皮膚のタイプが分けられます。日本人に関しては、一般に次の3つのタイプに分けられます。
  • タイプ I : すぐに赤くなり(サンバーン ++)、後に残らないか、わずかに着色する(サンタン ±)。

  • タイプ III : ほとんど赤くならず(サンバーン ±)、あとで強く着色する(サンタン ++)。

  • タイプ II : 両者の中間で、ほどほどに赤くなり(サンバーン +)、徐々に着色が起きる(サンタン +)。

皮膚のタイプは皮膚がんの発症と強く関連していると考えられており、白人を対象とした疫学研究においては、タイプIの人ほど皮膚がんに罹りやすいことが示されています 12)。また日本人を対象とした研究では、タイプIの人ほど前がん症状の一つである日光角化症に罹りやすいという結果が報告されています。

 

図13 日焼けとスキンタイプ(市橋1996 11)より転載)
2) 慢性影響
慢性影響には後述する皮膚がんの他、シミシワといった皮膚の老化があります。基本的に紫外線曝露によって増えたメラニンは、やがて表皮の角化とともに角質層から脱落し皮膚の色も元に戻りますが、紫外線を大量に浴び続けると、一部の色素細胞はメラニンを作り続けるようになり皮膚が黒いままの部分ができます。これがシミです。また急激で強い日焼けを何年も繰り返していくと、シミができるだけではなく、皮膚の弾力性がなくなりシワが多く出来てきます。これらを総称して光老化と呼んでいます。

その他、ソバカスホクロ日光角化症(あるいは老人性角化症:皮膚における主要な前がん状態の一つで、老人の日光露出部に出現する常色から褐色までの小さな角質増殖:南山堂医学大辞典第18版より抜粋)など、皮膚がんの危険因子と考えられている症状もあり、効果的な防御を心掛ける必要があります。

3) 皮膚がん
過度の紫外線(UV-B)曝露と皮膚がんの一種、有棘細胞がん発生に関連があることはよく知られていますが、その他の皮膚がんに関しては明確な証拠はありません。皮膚がんは、非黒色腫型皮膚がん(ノンメラノーマスキンキャンサー:non melanoma skin cancer)と悪性黒色腫(メラノー マ:melanoma)に分けられます。

非黒色腫型皮膚がん
有棘細胞がん基底細胞がんに分類されます。非黒色腫型皮膚がんに関してはいくつかの国で近年増加が報告されています。紫外線曝露非黒色腫型皮膚がんの重要な危険因子で、特に有棘細胞がんの発生には生涯曝露量(一生のうちに浴びる量)が関係すると考えられています。一方、基底細胞がんに関しては、紫外線の間歇的な大量曝露が誘因であると考えられています。
  • 発生部位基底細胞がんの75%、有棘細胞がんの半分以上が、頭部といった日光に強く曝される部位に発生します。さらに、前腕部などふだん日光に曝される部位にも多く発生します。

  • 感受性皮膚や眼、髪の色の淡い人サンバーンを起こしやすい人リスクが高いと言われています。

  • 地理的分布緯度との間に負の相関関係が認められ、緯度が10度低くなると非黒色腫型皮膚がんの罹患率はおよそ2倍になると言われています。日本のデータでこのように明瞭な関係を示すものはないため、オーストラリアの例を図14に示します。
図14 オーストラリアにおける皮膚がんと紫外線の関係

 

悪性黒色腫
非黒色腫型皮膚がんに比べると罹患率は低いものの、がん転移による致命率が高く、死亡に占める割合は大きくなります。オーストラリアやニュージランドなどを筆頭に、全世界的に増加しています。
  • 発生部位
    紫外線は悪性黒色腫の発生要因の一つと考えられていますが、非黒色腫型皮膚がんと異なり、日光に曝されることの少ない部位にも発生します。

  • 感受性
    欧米の白人を対象にした疫学調査では皮膚の色の淡い人サンバーンを起こしやすい人ほくろあざが出来やすい人のリスクが高いと言われています。

  • 地理的分布
    緯度との間には負の相関関係があり、赤道に近い地域ほど罹患率が高くなります。例外的に、ヨーロッパの白人では、スカンジナビア諸国の罹患率が地中海諸国より高くなっています (IARC1997)。

  • その他
    ヨーロッパで生まれて子供の頃を過ぎてからオーストラリアへ移住した人たちは、オーストラリアで生まれた同じヨーロッパ系の人たちと比べて悪性黒色腫に罹るリスクがおよそ1/4です。一方、ヨーロッパで生まれて子供の頃にオーストラリアへ移住した人たちのリスクは、現地で生まれた人たちとそれほど変わらず、子供の頃の紫外線曝露が重要な要因であるとされています。

 

*紫外線保健指導マニュアル(環境省)より引用